藤丸のブログ

組織人事コンサルタントの藤丸が日々考えてることを綴っていきます。

ノーレイティングは日本企業に浸透するのか

人事の世界では有名なことだが、最近はアメリカ企業を中心として「年次での人事評価を廃止する」という流れがある。ここでの評価を辞めることの意味は、社員にA・B・C・Dなどのランク付けをすることを辞めるということとする。(但し、本人にはフィードバックしないが、報酬の決定のために人事・マネージャー間でのみレイティングを行っている企業もあり、実態は個別に異なる)

そもそもなぜ、ノーレイティングの動きが広まっているかというといくつかの理由がある。

 

①    ビジネスを取り巻く環境の変化の激しさ

この理由が最も大きいのではないかと思うが、ビジネスを取り巻く環境の変化のスピードが激しさを増したことにより、これまでのように1年間をスパンとした目標管理制度では、うまく機能しなくなったということがある。(半年間・4半期であっても、同様の理由である)

期初に立てた目標が、期末時点ではあまり意味を為さなくなっている、ということは特に変化の激しい業界ではよくあることだと思う。目標の時間軸や優先順位が、刻一刻と変化する状況においては、年次で上から降りてきた目標の達成度を評価するよりも、現場が主体となりマネージャーとの相談のもと、目標を柔軟に変化していく姿勢が求められる。

 

②    多様な専門人材の活用

1とも関連するが、企業においてはますます専門人材の活用が必要となる。特定の専門人材については、社内での育成が困難となるため、どのような雇用形態であるにせよ、今後企業は外部からの専門人材を活用する必要性が益々増していくだろう。こういった専門人材の評価については、企業としては、当然共通の尺度で評価をすることが困難となり、A・B・C・Dといったレイティングの信憑性も怪しくなってしまう。

 

他にも、アメリカ企業における人事データの分析の普及により、これまでの人事評価そのものの信憑性が疑われていることや、個人による目標の達成度だけでなく、他の組織との相互連携がより求められてくること等の理由により、ノーレイティングの動きは広まっている。

 

GEやアクセンチュア、ギャップ、マイクロソフト等の名だたる企業によるレイティングの廃止により、最近は私が担当する日系企業の顧客においても、「レイティングを廃止したい」乃至は「年次評価を廃止したい」というような相談をよく受けることがある。

但し、最終的には色々な懸念材料があり、ノーレイティングにまで踏み切った企業はまだない。

レイティングの廃止による一番の懸念事項は、現場マネージャーの負担によるものが大きい。ノーレイティングでは、現場立脚による目標を立て、それをマネージャーとの1 on 1のもと目標の修正とリアルタイムのフィードバックを実施する。また、報酬額の決定においては、A・B・C・Dの評価により報酬額を決定するのではなく、現場マネージャーに原資を渡し、マネージャーの裁量のもとで配分するという方法が多くとられる(勿論、他の方法もあり得る)。

日本企業のマネージャーはプレイングマネージャーが多いため、アメリカ企業と同様にノーレイティングを形だけ導入しようとすると、マネージャーの負担がかなり大きくなり、機能させるのが難しくなる(組織設計自体から見直すことも考えられるが、、、)。

 

但し、こうした即時フィードバックのコミュニケーションを重視したアメリカ企業の取り組みに対して、日本企業が学ぶことはたくさんあると思う(現に、日本のIT企業を中心として、1 on 1の取り組みが広まっている)。

そのため、当分の間はこれまでの目標管理制度をベースとしつつも、アメリカ企業の人材マネジメントの一部をカスタマイズして取り入れていくのではないかと考えている。