藤丸のブログ

組織人事コンサルタントの藤丸が日々考えてることを綴っていきます。

他社の人材マネジメントを真似てはいけない

 

私は数年人事コンサルティングをしてきましたが、その経験の中でクライアントからよく言われるのが、「競合の〇〇社で、こういう取り組みを行っているのを聞いたので、うちの会社にも導入したい」とか「最近は米国でNo ratingが流行っているからうちも検討したい」とかいうものです。

もちろん、他社事例を参考にすること自体は否定しませんが、それが自社において有効にworkするかは慎重に検討する必要があります。ただ単に他社の人材マネジメントを模倣するということは、そこには限られた資源の傾斜配分という戦略はなく、他社と何ら差別化できない均質的な人材を大量に生み出していることに他ならないからです。

少し考えてみると不思議な話なのですが、経営者が他社の経営戦略を真似るなんてことはありえないと思いますが、戦略に紐づくはずの人材マネジメントとなると、他社の事例や最近のトレンドを急に真似し始めることが多いように思います。(最近は働き方改革ブームでなおその傾向が強いように思います。)

 

当たり前のことですが、企業の戦略が異なれば、とるべき人材マネジメントも自ずと変わってきます。

よくある例ですが、GEは戦うべき市場を決めそこでトップを目指す(収益の伸びが一番早い市場にリソースを投入する)という明確な戦略があるため、やるべきことを徹底的にやりきる人材が求められます。経営幹部が戦うべき市場を決めるため、そこで勝ちきれる人材を育てるためのマネジメントが人事の基本的な考え方となります。対照的な企業はリクルートで、現場から新規事業を創出し続けるために、採用を最も強化し、思い切った権限移譲を進めることで、新しいビジネスを生み出すことのできる人材を育ててきました。まさに、「自らチャンスをつくり、そのチャンスによって自らを変えよ」という企業スローガンが浸透しているかと思います。

このように、人材マネジメントにはこのような制度が理想的だというものはなく、各企業の置かれている状況、取るべき戦略によって全く人材マネジメントが変わってくることが普通で、寧ろそうあってしかるべきなのです。


このようか考え方のない人材マネジメントは人事戦略とは到底呼べないものとなってしまいます。(戦略とは自社の優位性を築くことに他ならないのですから)

 

日本のHR業界においては、最近やっと「戦略人事」という言葉が聞かれるようになってきたかと思いますが、今後このような考え方が人事部長から現場の人事担当者にまで当たり前のように広がっていくことを期待しています。