藤丸のブログ

組織人事コンサルタントの藤丸が日々考えてることを綴っていきます。

転職はしてもしなくてもいいけど、考えた方が良いという話

最近、昔の友達や後輩から転職についての相談を受けることが増えました。まあ、転職という選択肢が段々と普通になってきているので、当然と言えば当然かもしれません。

ただその中でも本気で転職を考えているような人はごく一部で、多くの人は現状に不満を抱きつつも一社に勤め上げるという世界観を受け入れて転職を諦めてしまっている人が意外と多いように思います。
これは、本当に勿体無いですしもっと言うと危険なことでもあると感じています。

 

そういった方の話をよく聞いてみると、「現状の仕事をまずはやりきることが大切」、「はっきりとした成果をまだ生み出していない」、「人間関係ができているので、周囲に貢献することを覚えたい」など、曖昧で尤もらしいことを言います。これは全く間違っていなく、ある一面で正しいことでもあるのですが、志向としては内向きで、労働市場での自分の価値についてしっかりと考えているのか不安に感じてしまいます。もっと言うと、会社や上司からのポジショントークをそのまま受け入れてしまっているのではないか、と思うこともあります。

 

現状の仕事に前向きに取り組み周囲に貢献することは前提として大事ですが、その仕事を通じてどんな能力や人脈が得られるのか、○歳までにどうなっていたいのかは具体的に描けていた方が良いと思います。日本企業はこれまで新卒一括採用、終身雇用制度を前提とした人事制度を採用してきたので、社員のエンプロイアビリティ(転職可能性)を高めるということにはあまり関心がありません。それはつまり、自社で一生懸命目の前の仕事に打ち込んだとしても、それが転職市場で評価されるかどうかはかなり怪しいということです。(もちろん、最近は社員のエンプロイアビリティを高めるということに力を入れている会社もありますし、前提としての個人の努力も必要です。)

 

しかし、言わずもがなこうした日本企業の人材マネジメントの前提は大きく揺らいでいます。この前提が成り立つための組織の持続的な拡大や組織のピラミット構造の維持が難しくなっているからです。個人にとってみれば、若いうちに低い給料で働かされても後で必ず回収できるという今までの図式は保証できなくなってきていますし、そもそも会社自体の寿命も短くなってきている傾向にあります。そうすると、一社に自分のキャリアを預けるのではなく、個人でキャリアをデザインしていく能力がますます重要になってくるはずです。

 

そのため、私は友達や後輩から転職の相談を受けた際には、「目の前の仕事に打ち込むことも大事だけど、それが転職市場でどのように評価されるのかはちゃんと考えた方が良いよ」と必ずアドバイスをするようにしています。結果として、転職をする必要がないのであればそれに越したことはないのですが、いつでも転職をできる自分をつくっておかないとやはりリスクが高いなぁと思います。本人が成長していると感じていたとしても、他人の目から見るとそうではない場合も多いですし。そういった意味では、すぐに転職を考えていなくても定期的にエージェントにあって、自分の市場価値を把握する努力はちゃんとした方がいいと思っています。(ただし、エージェントは人を動かして初めて収益を上げる仕事なので、基本は絶対に転職を勧めてくるので注意が必要です。長期的な視点でアドバイスをして欲しい旨を伝え、ちゃんと信頼できる人なのか見極めが大事です。)