藤丸のブログ

組織人事コンサルタントの藤丸が日々考えてることを綴っていきます。

就活でやりたいことがわからないとき

今年も就活が解禁され、多くの学生さんが、これから企業の面接に望みます。売り手市場である今年は、学生さんにとっては有利で、就職氷河期の頃とは全く異なり、たくさんの選択肢が目の前にあることと思います。

人は多くの選択肢が目の前にあると悩んでしまうもので、(非常に贅沢な悩みだと思いますが、)「本当に自分がやりたいことは何だろうか?」と自分探しの迷路に迷い込んでいる人も多いのではないでしょうか。

特に近年では、若者が考える「働く意義」も多様化してきており、「自分が何のために働くのか?」といったことが、大変重要視されてきているように思います。

就職のような人生の重要な意思決定において、このようなことを深く考えることは大変有意義であると思いますが、一方で、過度に自分の内面を見つめ、やりたいことを探そうとすることは、少し危険な面もあります。

なぜ危険なのか?少し考えてみたいと思います。

一番、大きな理由は以下の点だと思います。

 


自分が何が好きかは、経験を通してみないと分からないから

 


今就職活動をしている多くの若者は、アルバイトや企業インターンなどで働いた経験は多少あるかもしれませんが、当然のごとく経験は浅く、ほとんど働いたことがない方が多いと思います。

しかし、仕事というものはある程度一生懸命やりこんで、初めてその面白さが分かってくる面もあります。

実際に、企業に就職すると、自分の意に沿わない配属がされることもありますが、元々面白くないと思ってた仕事でも一生懸命取り組んでみると、その面白さに気づくことができたという人がたくさんいます。

例えば、クリエイティブな仕事がしたいから企画部門への配属を希望していたのに営業に配属されて落ち込んでいた私の友人は、最初はなかなか成果も出せず仕事が苦痛だったものの、クライアントの課題に正面から向き合っているうちに、少しずつ自分なりのアイデアを提案に盛り込むことで、営業のクリエイティブな面に気づき、今では営業は自分の天職であると言います。

このように、経験を通して新たに気づくということがたくさんあります。

そのため、経験が少ない中で、自分が好きな仕事は何だろうと考えること自体が少し無理な話で、実際に動いてみることで気づくことの方が、実は多いかもしれません。

 


ちなみに、キャリア論の中では有名な研究ですが、スタンフォード大学の心理学・教育学の教授であるクランボルツの研究では、成功者のキャリア形成のきっかけは80%が偶然であるとしています。

この研究の中では、キャリアを成功させるための重要な考えとして、「【好奇心】自分の専門分野だけでなく、いろいろな分野に関心を持つこと」や、「【持続性】最初はうまくいかなくても粘り強く続けること」等を挙げています(その他は、楽観性・柔軟性・冒険心)。

 


そのように考えると、自己分析によって過去の自分を振り返りやりたいことを決めるという行為は、ともすれば自分の可能性を自ら狭めてしまうような危険性もはらんでいると思います。

 


自己分析はほどほどに、色々な分野に関心を持って実際に行動を起こしてみる方が、良いキャリアを形成するためには重要かもしれません。

内に篭って内省を深めることは、その努力の割に得られるものが少ないのではないか、とも思います。

 

ノーレイティングは日本企業に浸透するのか

人事の世界では有名なことだが、最近はアメリカ企業を中心として「年次での人事評価を廃止する」という流れがある。ここでの評価を辞めることの意味は、社員にA・B・C・Dなどのランク付けをすることを辞めるということとする。(但し、本人にはフィードバックしないが、報酬の決定のために人事・マネージャー間でのみレイティングを行っている企業もあり、実態は個別に異なる)

そもそもなぜ、ノーレイティングの動きが広まっているかというといくつかの理由がある。

 

①    ビジネスを取り巻く環境の変化の激しさ

この理由が最も大きいのではないかと思うが、ビジネスを取り巻く環境の変化のスピードが激しさを増したことにより、これまでのように1年間をスパンとした目標管理制度では、うまく機能しなくなったということがある。(半年間・4半期であっても、同様の理由である)

期初に立てた目標が、期末時点ではあまり意味を為さなくなっている、ということは特に変化の激しい業界ではよくあることだと思う。目標の時間軸や優先順位が、刻一刻と変化する状況においては、年次で上から降りてきた目標の達成度を評価するよりも、現場が主体となりマネージャーとの相談のもと、目標を柔軟に変化していく姿勢が求められる。

 

②    多様な専門人材の活用

1とも関連するが、企業においてはますます専門人材の活用が必要となる。特定の専門人材については、社内での育成が困難となるため、どのような雇用形態であるにせよ、今後企業は外部からの専門人材を活用する必要性が益々増していくだろう。こういった専門人材の評価については、企業としては、当然共通の尺度で評価をすることが困難となり、A・B・C・Dといったレイティングの信憑性も怪しくなってしまう。

 

他にも、アメリカ企業における人事データの分析の普及により、これまでの人事評価そのものの信憑性が疑われていることや、個人による目標の達成度だけでなく、他の組織との相互連携がより求められてくること等の理由により、ノーレイティングの動きは広まっている。

 

GEやアクセンチュア、ギャップ、マイクロソフト等の名だたる企業によるレイティングの廃止により、最近は私が担当する日系企業の顧客においても、「レイティングを廃止したい」乃至は「年次評価を廃止したい」というような相談をよく受けることがある。

但し、最終的には色々な懸念材料があり、ノーレイティングにまで踏み切った企業はまだない。

レイティングの廃止による一番の懸念事項は、現場マネージャーの負担によるものが大きい。ノーレイティングでは、現場立脚による目標を立て、それをマネージャーとの1 on 1のもと目標の修正とリアルタイムのフィードバックを実施する。また、報酬額の決定においては、A・B・C・Dの評価により報酬額を決定するのではなく、現場マネージャーに原資を渡し、マネージャーの裁量のもとで配分するという方法が多くとられる(勿論、他の方法もあり得る)。

日本企業のマネージャーはプレイングマネージャーが多いため、アメリカ企業と同様にノーレイティングを形だけ導入しようとすると、マネージャーの負担がかなり大きくなり、機能させるのが難しくなる(組織設計自体から見直すことも考えられるが、、、)。

 

但し、こうした即時フィードバックのコミュニケーションを重視したアメリカ企業の取り組みに対して、日本企業が学ぶことはたくさんあると思う(現に、日本のIT企業を中心として、1 on 1の取り組みが広まっている)。

そのため、当分の間はこれまでの目標管理制度をベースとしつつも、アメリカ企業の人材マネジメントの一部をカスタマイズして取り入れていくのではないかと考えている。

人事コンサルタントの辛いところ3つ

 

  最近人事コンサル志望の学生と話していて、「人事コンサルって大変なんですか〜?戦略系や業務改善系と比べるとどうなんですか?」と素朴な質問を受けたので、どんなところが大変なのか自分の経験から簡単にまとめてみました。

 

ちなみに私は、人事制度設計をメインとしているのでチェンジマネジメント系やエグゼクティブサーチファームなどはよく分からないので、その点はご了承ください。(あと、あくまで私の主観です)

 

①プロジェクトは基本2つ〜3つ担当する
人事コンサルの場合は、戦略系やIT系と比べて案件の規模が小さいものが多いため、若手のうちは大体平均して2つくらいのプロジェクトを担当するのが普通です。期間はプロジェクトによって異なりますが、半年から1年くらいの期間が多いでしょうか。そのため、戦略系ファームなどでよく聞かれる、忙しい時は死ぬほど忙しいが、プロジェクトとプロジェクトの間は長期休暇がとれるというようなことは滅多に起こりません。
忙しい状態が半永久的に続くこととなります。あるパートナーは、長期休暇なんて20年間とったことがないとまで言っていました(泣)
もしかするとそうではないファームもあるかもしれませんが、私が聞く限りだとどのファームも複数のプロジェクトを担当するのが普通みたいです。

 

②頭を使うのはプロジェクトの最初の2ヶ月間くらい

 

これはもちろんプロジェクトによるので、過度に一般化はしたくないのですが、概ね当てはまるのではないかと思います。人事制度改定の際には、主に等級制度、報酬制度、評価制度の基幹人事制度と呼ばれる部分を改定することが多いのですが、クライアントの課題を抽出し、戦略に沿った人事制度の骨格をつくるという部分は会社によって全く異なるため、本当に知恵を絞ることになります。ただし、人事制度の骨格が固まり、ある程度プロジェクトが進み出すと、論点が絞られてきます。ここの部分については他のプロジェクトのマテリアルが使用できることも多く、経験がものをいう世界なのですが、正直なところあまり面白みというのを感じられないことが多いです(M &A案件は少し異なるかも)。同僚や先輩コンサルタントと話していても、ここら辺は割と共通することが多いので、割り切ってやるしかないところでもあります。

 

③上位方針が固まらないと、人材マネジメントのあるべき姿を描けない

 

人事制度はあくまでも経営方針に紐づくわけなので、上位方針が固まらなければ人材マネジメントのあるべき姿を描けず、プロジェクトが止まることさえもあります。特にM &A案件なんかは両社の経営方針や組織設計などが固まらないなんてことは割とあります。そのような時には、一旦プロジェクトをペンディングするというようなこともありますが、現行人事制度の課題ベースで新人事制度を設計し、プロジェクトを終えるなんてことも多いです。そういった案件は正直なところソリューションが大体決まってくるので、そのようなプロジェクトが続くと成長感が湧かずに、停滞感を感じてしまう人もいます。個人的には地味な作業が続くのは辛いですね。アンコントローラブルな要素が多いのが嫌で、次のキャリアとして事業会社やより上流の戦略コンサルに行く人も結構多いんじゃないかと思います。

 

以上、3つあげさせて頂きましたが、人事コンサルは地味な仕事も多くあります。ただ、それ以上にやりがいのある仕事もたくさんあるので、そういったポジティブな面もいずれ書いてみたいと思います。

組織人事コンサルティング業界いろいろ

 

組織人事コンサルティングというと普通の人はどんな仕事を思い浮かべるのだろうか。戦略コンサルやITコンサルと違って、いまいち組織人事コンサルティングと聞いてもその仕事内容が判然としないのではないだろうか。私自身もこの業界にいてよく思うのだが、「コンサルタント」という言葉が一番乱立しているのが、この業界のような気がしている。そのため、仕事内容をよく調べない就活生などが間違って入社し、ギャップを感じるなんてことがけっこう起こりがちである。そこで、この業界をよく知らない人達のために私なりに下記にて整理をしてみた。
(※ちなみに私は人事制度改革、M&A後の人事制度統合などをメインにこれまでキャリアを積んでいるので、研修系やエグゼクティブサーチなどは聞いた情報をもとに記載しております)

 

①組織人事ブティック系コンサルティングファーム

マーサージャパン、タワーズワトソン、コーン・フェリー・ヘイグループの3社が有名。日系もいくつかあるものの、プレゼンスはあまり高くはない。
同じ会社内でも、人事制度設計やM&Aコンサルティングと年金・退職金コンサルティングは大分仕事内容が異なる。年金・退職金コンサルティングは、アクチュアリーなどの資格を持っている人が多数いる。
また、タワーズワトソンとヘイグループの2社は特に戦略系コンサルティング出身者が多く活躍している。

 

②総合コンサルティングファームの組織人事ユニット

デロイトトーマツコンサルティングアクセンチュアプライスウォーターハウスクーパースなどが有名。
会社全体として戦略の立案から運用基盤の構築まで一貫したサービスを提供できることが強み。他部門と連携しながらダイナミックな仕事ができる一方で、総合ファームなだけに会社によっては必ずしも人事ユニットに配属できないこともあるので注意が必要。また、インダストリーで部署が分かれたりするところもあるので、会社によっては幅広い経験が積めないということもあるかも。人事システムの導入などの案件も多い。

 

③人材育成・チェンジマネジメント系

リクルートマネジメントソリューションズ、リンクアンドモチベーショングロービスなどが有名。
その他、小さい研修会社もたくさんある。小さい会社ほど営業色が強く新人から数字の責任を負い、テレアポをガンガンするというような会社も多いと聞く。一部の会社はコンサルティングというイメージからはギャップもあるかもしれない。また、研修のパッケージを安く大量に売っているような会社もあったりするので、自分が入ったときにどのような経験を得られるのかは見極めが必要。

 

④エグゼクティブサーチファーム

コーンフェリー、エゴンゼンダー、スペンサースチュアートなどが有名。
経営幹部や特定の専門スキルを持った人材を外部からヘッドハンティングをする仕事である。人材紹介会社との違いとしては、最初にリテイナーフィーが発生すること、転職の意志に関わらず欲しい人材をスカウトすることなどである。

その他、採用のアウトソーシング会社や人材紹介会社なんかも肩書きに「コンサルタント」と書いてあったりする。別にコンサルタントの定義云々の話をしたいのではなく、一口に組織人事コンサルティングといっても、強みのある領域や仕事内容は様々であるということ。(コンサルティングを謳った方が人が集まりやすいので取り敢えず名前だけ・・・といった会社もあったりする)特に就活生は入社してからギャップを感じないように、事前に仕事内容をよく調べた方が良い。また、ほとんど研修しかサービスがないのにも関わらず、ホームページ上には制度設計とかもできる風に書いてある研修会社もあるため注意されたい。事前に案件の内容や1人あたりに担当する案件の数などをしっかり聞いておくことがお勧め。(1人あたりで担当する案件が多いほど、パッケージ売りになりがちのため)

転職者が最終出社日にしておいた方が良いこと

 

転職が決まって上司に伝えてから、急に周囲が冷たくなったり、引き継ぎに追われてなかなか有休が消化できなかったり、休みもとれないのに誰にもできるような雑務を平然と押し付けられたり、社内のキーパーソンが自分に転職の相談に来たりなどなど、転職を決めてから最終出社日までの間は、もしかすると予期せぬことがたくさん起こるかもしれません。

そんな中で「こんな会社本当に辞めて正解だったな」ということもあれば、「会社の良いところを見れてなかったな。自分の我儘だったな」と思うこともあるかと思います。
しかし、例えそのことに対してどう思ったとしても、いずれ「外部の人」になる転職者に対して周囲の人はそれほど関心はないでしょうし、転職を決めた以上、するべきことをして次への準備を進めるしかないと思います。
特に、最終出社日の転職者の行動・立ち居振る舞いは周囲の人は意外に覚えているものなので、気を引き締めて臨んだ方が良いかと思います。


最終出社日にしなければいけないことはたくさんあるとは思いますが、特に下記については今後の仕事にも影響のある部分ですので、念入りに実施することをお勧めします。

 

①事務的な手続きは完璧にこなす

最終出社日ともなると、離職票の受け取りやPCや携帯電話、セキュリティーカードの返却など、必ずしなければならないことがたくさんあります。(離職票は必ずではないですが)
ここで、会社に返却をし忘れたものがあったり、本来は受け取らなければいけない書類を受け取り忘れたりなどすると、退職した後に人事とやり取りをしなければならなくなるので、大変面倒です。
面倒くさいだけならまだいいですが、そういった当たり前のことができていないと、「あいつ、こういうところあったよな」など最後の最後で自分の評判を下げることになってしまうかもしれません。
自分が去った後の評判はコントロールできませんが、最終出社日の印象が与える影響は意外と大きいと言えます。

 

②後輩への最後の引き継ぎ確認
最終出社日ともなれば、後輩や同僚への引き継ぎはほとんど終わっているかと思いますが、共有し忘れた情報などがないか最終チェックをしてあげましょう。
おそらく、引き継ぎを100%完璧にこなすということはあまりないはずなので、何かしら伝えた方がいい情報が残っているかと思います。
最終出社日で比較的時間が余っている時だからこそ、念入りに情報を確認し、伝えられるものは全て共有しましょう。
引き継ぎは基本的には、引き継いだ側が苦労をするものですが、最後まで情報のチェックをし些細な情報まで共有した姿勢があれば、引き継いだ側は覚えていて良い印象を抱くものです。
また、引き継ぎは顧客にも影響するので転職者自身の評判にも関わります。
同じ業界に転職する場合などは特に要注意で、また一緒に仕事をすることもあるかもしれません。
その場合、次の会社での仕事にダイレクトに関わってきますので、念には念を入れて引き継ぎの対応をしましょう。

 

③上司・同僚への挨拶まわり

こんなのするのが当たり前じゃん!という方が多いかもしれません。
しかし、私の経験上、転職する人の3割くらいの方は親しい人だけに軽く挨拶をしてあとは一斉送信の挨拶メールだけを送って、いつの間にかしれっといなくなります。(私の勤めていた会社が少し変なのかもしれませんが)
退職する方は少なからず会社に不満を持っている方も多いですし、退職日までの間にさらに会社に嫌気がさして、挨拶もせずにいなくなりたい!と思ってしまうかもしれません。
ただし、最終出社日の印象というのは周囲の人に意外と印象に残りますし、「あいつは、この会社が嫌いだったんだな」「最後なのに挨拶もせずに帰りやがったな」なんて思われると後々自分が損をしてしまいます。
特に同じ業界に転職をする方などは、いつまた一緒に仕事をするか分かりませんので、例え恨みつらみが溜まっている相手であっても最後ぐらいはにこやかに挨拶をしてから別れるのが良いかと思います。
粗品を事前に購入して、配ってあげると尚良いです。
ここで、例えばあなたの嫌いな上司が去り際に嫌味でも言ってくることもあるかもしれませんが、それはそれでにこにこしながらうまくかわしてあげるのが良いでしょう。
相手はコントロールできないものですし、周囲の人は意外と転職者の行動を見ているものなので、するべきことをして少なくとも自分は筋を通しておくのが良いかと思います。

他社の人材マネジメントを真似てはいけない

 

私は数年人事コンサルティングをしてきましたが、その経験の中でクライアントからよく言われるのが、「競合の〇〇社で、こういう取り組みを行っているのを聞いたので、うちの会社にも導入したい」とか「最近は米国でNo ratingが流行っているからうちも検討したい」とかいうものです。

もちろん、他社事例を参考にすること自体は否定しませんが、それが自社において有効にworkするかは慎重に検討する必要があります。ただ単に他社の人材マネジメントを模倣するということは、そこには限られた資源の傾斜配分という戦略はなく、他社と何ら差別化できない均質的な人材を大量に生み出していることに他ならないからです。

少し考えてみると不思議な話なのですが、経営者が他社の経営戦略を真似るなんてことはありえないと思いますが、戦略に紐づくはずの人材マネジメントとなると、他社の事例や最近のトレンドを急に真似し始めることが多いように思います。(最近は働き方改革ブームでなおその傾向が強いように思います。)

 

当たり前のことですが、企業の戦略が異なれば、とるべき人材マネジメントも自ずと変わってきます。

よくある例ですが、GEは戦うべき市場を決めそこでトップを目指す(収益の伸びが一番早い市場にリソースを投入する)という明確な戦略があるため、やるべきことを徹底的にやりきる人材が求められます。経営幹部が戦うべき市場を決めるため、そこで勝ちきれる人材を育てるためのマネジメントが人事の基本的な考え方となります。対照的な企業はリクルートで、現場から新規事業を創出し続けるために、採用を最も強化し、思い切った権限移譲を進めることで、新しいビジネスを生み出すことのできる人材を育ててきました。まさに、「自らチャンスをつくり、そのチャンスによって自らを変えよ」という企業スローガンが浸透しているかと思います。

このように、人材マネジメントにはこのような制度が理想的だというものはなく、各企業の置かれている状況、取るべき戦略によって全く人材マネジメントが変わってくることが普通で、寧ろそうあってしかるべきなのです。


このようか考え方のない人材マネジメントは人事戦略とは到底呼べないものとなってしまいます。(戦略とは自社の優位性を築くことに他ならないのですから)

 

日本のHR業界においては、最近やっと「戦略人事」という言葉が聞かれるようになってきたかと思いますが、今後このような考え方が人事部長から現場の人事担当者にまで当たり前のように広がっていくことを期待しています。

MBTIを受けてみてすごく面白かったときの話

最近というか少し前にfacebookのタイムラインなどでMBTIの結果がたくさん流れてくることがあり、ちょっと気になっていることがありました。知らない方も多いかもしれませんが、MBTIとはユングのタイプ論をベースとして、質問紙をきっかけに検証していくプロセスを通じ、自己理解を深めていくためのメソッドです。MBTIの最大の特徴としては、普通の性格検査とは異なり、検査結果はあくまでもただのきっかけとして研修などを通して自分の志向を知り、自己理解を深めていくというものです。そのため、質問紙の回答のみを通じて自分の性格を判断するようなものではありません。

また、MBTIは特性論ではなくタイプ論の見方をしているというのも特徴です。(日本人は人の性格を見るときに、「優しい」とか「明るい」とか相対的なものの見方をよくします。こういった量や程度を測る見方を特性論と言います。)タイプ論では、カテゴリーに分類された絶対的なものの見方をします。

MBTIは非常に面白いメソッドであるが故に、ネット上では気軽に回答をし「あなたはこのタイプです」という診断結果が出るようなものが溢れているのですが、本来は簡単に診断ができないものですし、MBTI協会のホームページでは明確に「してはいけないもの」だと記載がなされています。実施方法も本来的には、一定の訓練を受けたMBTI認定ユーザーからの研修などを通して、時間をかけて自己理解を深めていくそうです。

実際、藤丸が数年前に会社の研修でMBTIを受けた際も、事前にネット上で質問紙に回答をした上で、MBTI認定ユーザーからの研修を約1日間かけて受けました。MBTIには4つの指標があり、興味関心が外向か内向か(EかIか)、情報の取り入れ方が感覚か直観か(SかNか)、思考型か感情型か(TかFか)、判断的態度か知覚的態度か(JかPか)で分かれ、最終的に2×2×2×2=16タイプに分類されます。

このそれぞれの指標について、独自のワークショップがありその中で同じタイプ(だと思われる)の人、異なるタイプ(だと思われる)の人との対話を通じて、自分のタイプを探っていきます。自分が実際に受けたときもそうでしたが、質問表で得た回答と最終的に自分が出した結論が異なる人がけっこういました。講師の方曰く、質問表で得た結果の4つの指標が、最終的に全て変わっても良いそうです。(なので、ネット上の診断だけだとあまりあてにならないんですね。)また、1日間の自己理解セッションだけでは、自分がどのタイプか分からずに終わるという方もいるみたいです。そもそも自己理解が目的なので、MBTI認定ユーザーである講師が断定をしたり、誘導したりすることも禁じられています。講師はあくまでも支援者として、気付きを促すような質問を投げかけたりします。

私自身も、1日の研修を通して自分の自然に好む心の使い方を理解できましたし、他の人とのディスカッションを通して自分と異なるタイプの方の考え方を知ることができて非常に有意義でした。日常生活においても相手が今どちらの機能を使用しているのかに考えをめぐらしたりもします。異なる機能を使っていると分かれば、相手に合わせて自分の普段使っていない機能を使用したりもします。異なる考え方の相手に合わせることも覚えましたし、違いに対して少し寛容になることができたのではないかと考えています。

また、職場などで活用するのもけっこう面白いです。自分以外の人がどんなタイプかを知っているとコミュニケーションにも気をつけますし、社内で共通言語化がされているとふとした時に盛り上がったりします。

このMBTIの認定ユーザーの資格ですが、将来的に藤丸も取得したいなぁと思っております。MBTIの理論をもう少し深めたいですし、ファシリテーターにもチャレンジをしてみたいですね。取得するのに研修などの拘束時間と費用も少しかかるみたいなので、今は仕事の関係で厳しいですが、また仕事が落ち着いたら取得に向けて動き出そうと思います